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大阪地方裁判所 昭和43年(ワ)4731号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕二、<証拠>を総合すると、次の事実が認められる。

本件空地は、もと田地であつたが、前記訴外木村商事において買い入れた後、訴外寿商事をして盛り土をした土地であり、地面は平担でなく、でこぼこのある状態であつたこと、被告会社は、昭和四一年ごろから、前記木村商事に無断で、本件空地上に被告会社の鉄管、酸素ボンベ、煉瓦、半製品、不良品等を持ち込み、放置していたこと、被告会社は、右木村商事から再三にわたり右搬入物品の撤去方申入れを受けていたが、完全にこれを履行するまでに至らなかつたこと、本件空地付近の子供たちは、本件空地を遊び場としていたこと、被告会社の従業員は、本件空地でキャッチボールなどをして本件空地を利用し、また前記のとおり、事務所が本件空地の北隣にあつたので、付近の子供たちが本件空地を遊び場としていることを知つていたこと、前記木村商事の営業部長西村伊三郎は、昭和四三年二月ごろ、本件空地に被告会社が鉄管等を放置しており、かつ、付近の子供たちが同鉄管等を転がして遊んでいる状況を目撃し、被告会社代表者土井貞博に面接し、再度右鉄管等を撤去すべき旨申し入れるとともに、子供たちが右鉄管等で遊んでいて危険である旨忠告したこと、また被告会社の工事長小家石優は、付近の子供たちが本件空地で被告会社所有の半製品、ボンベ等で遊んでいるのを目撃し、その都度子供たちに対し「危いから帰れ」と命じて、本件宅地から立ち去らせていたこと、右木村商事は、本件空地管理の必要から、訴外増井工務店に注文し、本件空地上に高さ約二メートルの塀を作つたが、同工事は、昭和四三年四月に着工し、同年五月一三日ごろ(本件事故発生の約一〇日前)に完成したこと、右工事請負人増井工務店は、右工事着手前、被告会社に対し、再三にわたり本件空地上の鉄管等を撤去するよう申し入れたこと、ところで、付近の子供たちは、右のとおり本件空地上に塀が作られた後においても、西隣の相互信用金庫南方支店の階段からブロック塀を乗り越えたり、塀の下の隙間をくぐり抜けて、本件空地に出入りし、被告会社の鉄骨等を転がしたりして遊んでいたこと、本件事故鉄管一個および同型の鉄管一個は、昭和四三年四月ごろ、被告会社が前記木村商事に無断で本件空地に搬入し放置していたものであるが、右木村商事からの要求により、いつたん本件空地外の道路上に搬出したが、警察の取締りに合い、再び、被告会社は、その従業員三、四名により、同年五月二〇日ごろ(本件事故発生の三日位前)、右木村商事に無断で、本件空地を使用する権限がないのに、本件事故鉄管外一個を本件空地に搬入し、放置していたものであること、右のとおり、被告会社の従業員三、四名は、被告会社の業務の執行として、右鉄管二個を本件空地に搬入したものであること、本件事故鉄管は、相当に重く、これを持ち運ぶには最低大人二人を要する重量を有すること、本件事故鉄管外一個を搬入した被告会社の従業員三、四名は、前記事情の下において、付近の子供たちが、本件空地の塀の設備の前後を通じ、本件空地を遊び場とし、右鉄管等に入つたり、これを転がして遊んでいることを熟知していたか、またはこれを知り得べき状態にあつたこと、そして被告会社の右従業員は、本件事故鉄管外一個を本件空地に搬入して置く場合、本件空地の地面がでこぼこの状態であり、別紙付図第二図表示のように右鉄管の円周側面を下にして立てて置くときは、子供たちが同鉄管に入つたり、同鉄管を転がしたりして遊ぶとき、容易に転倒して重大な事故を引き起こす危険があつたのであるから、この場合、同従業員としては同付図第一図表示のように、同鉄管を初めから横に倒して置くなどして事故の起こらないよう注意すべき義務があるにかかわらず、この注意義務を怠り、漫然と、本件事故鉄管外一個を、土地の所有者である前記木村商事に断りなく搬入し、かつ、本件空地のでこぼこの地面上に、同鉄管の円周側面を下にして立てて置き、そのまま放置していたこと、被告会社従業員の右過失により、前記認定のとおり、同月二三日午後五時五〇分ごろ、亡浩史が本件事故鉄管で遊んでいるうち、本件事故鉄管が倒れ、浩史はその下敷となり、後頭部開放性陥没骨折の傷害を受け、その結果同月二五日午後零時三〇分、死亡するに至つたものである。

以上のとおり認められる。

<証拠判断略>

<証拠>によれば、本件事故につき、刑事訴追を受けた者のないことが認められるが、右の一事のみをもつてしては、前記認定を覆えすに足りない。

その他前記認定を覆えすに足りる証拠はない。

そうしてみると、被告会社は、被告会社従業員の使用者として、右従業員が被告会社の業務執行中になした前記過失により発生した本件事故につき、その損害を賠償すべき義務があるというべきである。

三、損害について

<中略>

3 以上を合計すると、原告両名の損害額は各二七三万円となる。

ところで、<証拠>によれば、前記木川小学校における亡浩史の担任教師竹村隆雄は、目ごろ生徒に対し工事現場等の危険な場所で遊ばないよう一般的に注意していたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

そして、本件空地には被告会社がその所有の鉄管、ボンベ、半製品等を持ち込み放置していて、子供の遊び場として危険な場所であつたことは、前記認定のとおりであり、また、<証拠>によれば、被告会社の工事長小家石優は、本件空地で子供たちが遊んでいるのを目撃したときは、子供たちに対し「危いから帰れ」と命じて本件空地から立ち去らせていたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

ところが、前記認定のとおり、亡浩史を含む子供たちは、本件空地に塀が設置される前後を通じ、本件空地を遊び場とし、塀が作られた後は、その塀の下をくぐり抜け、または西隣のブロック塀を乗り越えて本件空地に出入りし、危険な鉄管等で遊んでおり、そして遂に昭和四三年五月二三日午後五時五〇分ごろ、亡浩史において本件事故鉄管で遊んでいるうち、本件事故が発生するに至つたものである。

そうしてみると、亡浩史(当時七歳)自身、本件空地内の本件事故鉄管等で遊びことを中止すべきであつたし、また亡浩史の両親である原告両名は、亡浩史が本件空地で遊ぶことを禁止するか、仮に遊ぶとしても危険な本件事故鉄管等の中に入つたり、転がしたりして本件事故鉄管等で遊ぶことのないよう適切な保護監督をなすべき注意義務があつたというべきである。

ところが本件全証拠を検討しても、原告両名において右注意義務を尽したことを認めるに足りる証拠はない。

そして、原告側の右過失は、過失相殺により、前記損害額からこれを控除すべきところ、本件の事故発生に対する原告側の過失の程度は、前記各認定の事実その他本件全証拠を検討すると、三分の一が妥当であると認められる。

したがつて、原告両名の各損害額は、前記各二七三万円からその三分の一を控除した各一八二万円となる。

(なお過失相殺の適用については、被告のこの点に関する主張を要しない)

(小湊亥之助)

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